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浦和地方裁判所 平成元年(わ)54号 判決

本店所在地

埼玉県岩槻市東岩槻一丁目二番地一

有限会社英進ゼミナール

右代表者代表取締役

髙槁雅紀

本籍

東京都中野区中央四丁目一〇四番地

住居

埼玉県岩槻市仲町二丁目一二番三三号

会社役員

髙槁雅紀

昭和二五年一〇月二七日生

右被告人両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官相川俊明出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社英進ゼミナールを罰金六〇〇〇万円に、被告人髙槁雅紀を懲役一年六月に各処する。

被告人髙槁雅紀に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社英進ゼミナールは、埼玉県岩槻市東岩槻一丁目二番地一に本店を置き(設立時は同県春日部市大字大場七九四番地、昭和六三年一月一七日現所在地に変更)、学習塾の経営等を営業目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人髙槁雅紀は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統轄していたものであるが、被告人髙槁雅紀は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げの一部を除外し、給与を水増し計上するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六〇年二月一日から同六一年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億四九五五万九九七〇円であったにもかかわらず、同年三月三一日、同県春日部市大字粕壁五四三五番地一所在の所轄春日部税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四七一一万一五五二円で、これに対する法人税額が一九三八万九三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の同事業年度における正規の法人税額六三七四万九三〇〇円との差額四四三六万円を免れ、

第二  昭和六一年二月一日から同六二年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二億二一一一万九〇四〇円であったにもかかわらず、同年三月三一日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六五四九万二八一一円で、これに対する法人税額が二七三二万九一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の同事業年度における正規の法人税額九四七一万五六〇〇円との差額六七三八万六五〇〇円を免れ、

第三  昭和六二年二月一日から同六三年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二億八一〇六万三二六三円であったにもかかわらず、同年三月三一日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八二四九万一一七五円で、これに対する法人税額が三三六七万二一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の同事業年度における正規の法人税額一億一七〇七万二四〇〇円との差額八三四〇万〇三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人髙槁雅紀の当公判廷における供述

一  被告人髙槁雅紀の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  新井登志生及び髙槁みどりの大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書

一  清水敏恵、武田登(二通)及び此本隆弘の大蔵事務官に対する各供述調書

一  春日部税務署長作成の証明書

一  大蔵事務官作成の給料手当調査書、教材費調査書、旅費交通費調査書、通信費調査書、地代家賃調査書、会議費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、役員賞与調査書、共同経営負担金調査書、債券償還益調査書、事業税認定損調査書及び売上高調査書(八冊)

一  検察事務官作成の電話録取書

(法令の適用)

被告人有限会社英進ゼミナール及び同髙槁雅紀の判示各所為は、法人税法一五九条一項(被告人会社についてはなお同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人髙槁雅紀については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項によりその罰金額を合算し、被告人髙橋雅紀については同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、その金額及び刑期の範囲内で、被告人有限会社英進ゼミナールを罰金六〇〇〇万円に、被告人髙槁雅紀を懲役一年六月に各処し、情状により同法二五条一項を適用して、被告人髙槁雅紀に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人髙槁が、被告人会社の売上金の一部を除外し、給与を水増し計上するなどの不正な方法で所得を隠匿し、三年間に被告人会社の法人税合計一億九五一四万六八〇〇円を免れたというものであって、脱税額は多額で、その動機において酌量すべきものはなく、犯行は計画的で、手段、方法も巧妙、悪質であり、被告人両名の刑責は重いというべきである。しかし、その後、右ほ脱額全額を延滞税、重加算税とともに納付し、反省の情を示していることなどの事情を考慮し、被告人両名を主文掲記の刑に処し、更に被告人髙槁に対しては、その刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 和田啓一)

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